テクノロジーで変える日本のお茶栽培~伝統あるお茶づくりを支えるスマート農業~


農業に限らず、あらゆる分野で人手不足や後継者不足が問題になっている日本。お茶を栽培する農園も決して例外ではありません。現状のままでは、お茶の品質維持や安定供給が難しくなるなど、日本茶の将来への不安を訴える声もあります。そんな中、未来の農業を支える存在として脚光を集めているのが、スマート農業。人の手で培ってきた伝統的な栽培技術を生かしつつ、最新のテクノロジーで未来を変える取り組みが進められています。

農業にも本格的なDXがやってきている

就業人口の減少が社会問題として叫ばれる中、特に問題視されているのが農業の担い手不足です。新規就農者は減少の一途を辿る一方で、農業従事者の高齢化に歯止めがかかりません。そうした中、新たな課題解決の手法として注目を集めているのが、ICTやロボット、AIを使った農業のDX化。スマート農業の実用化です。

スマート農業で生産性をアップ

農林水産省をはじめとした機関や、大学などの研修施設が産学協同のプロジェクトとして進めている農業のスマート化。これまで人の手に頼っていた作業をロボットやITで補い、少ない人手でも十分な生産量と満足できる品質を維持することが目的です。

センシング技術で農作物の生育環境を管理

お茶をはじめとした農作物にとって、最も大きく影響するのが気象状況です。農場や農園の気温や湿度、降雨量といった情報は、古くから経験と勘で予測してきました。ですが、熟練の職人でなければ分からなかった部分を補ってくれるのが、センサー機器。人が五感で感じる情報をセンサー機器が読み取り、過去のデータを参照しながら、気温や湿度などを管理して、作物にとって最適な生育環境を生み出しています。

ドローンとカメラが作物を監視

広大な農場や農園を巡回して、生育状況を管理するのは大変な労力です。そこで、人の目に代わって作物の状態を監視してくれるのが、ドローンとカメラ機器。高所からドローンが作物の生育状況を画像として映し出し、データは全てシステム上で管理します。一つの角度だけでなく、多角度からとらえた画像で、虫や病気による作物への被害を未然に防ぎます。

AIで作物の品質を一定管理

作物の育成状況の良し悪しを判断するのは、AIによる技術。たとえば茶葉であれば、過去の生産データをAIが読み込み、品質と収量が最適化される時期を予想。常に一定の品質が保たれた茶葉を安定して生産できる体制づくりが可能になります。

テクノロジーが支える未来の農業

日本の食料自給率は40%と言われ、世界情勢にも大きな影響を受けています。ロシアのウクライナ侵攻による小麦価格の上昇は、記憶に新しいところ。安定的に食料を供給していく上でも、農業生産の効率化・省力化は重要な課題と言えるでしょう。さまざまな問題を抱える日本の農業を変えていくのは、若い力とテクノロジーです。今後さらに研究が進み、より便利で快適に農作業ができる環境が生まれていくはず。そんな農業の未来に思いをはせながら、一杯のお茶を味わってみてはいかがでしょうか。