どうして茶葉を揉むの?お茶の歴史を知れば理由が見えてくる


お茶の代表的な製造工程は「蒸す」「揉む」「乾燥」の3つ。新茶の季節になると、ニュース映像で茶葉を揉んでいるシーンをよく目にしますが、どうして茶葉を「揉む」のでしょうか。お茶以外ではあまり聞いたことがない「揉む」という工程。実はお茶の品質やおいしさを左右するとても重要な作業なのです。茶葉を揉む理由を知れば、いつものお茶がよりおいしく感じられるかもしれません。

昔のお茶は淹れるのがとても大変だった

みなさんがお茶を飲む際、急須に茶葉を入れてお湯を注いで淹れると思います。とても手軽にお茶を味わえるわけですが、昔のお茶は違いました。日本にお茶が伝わったのは、平安時代。中国からやってきたのですが、当時の茶葉は丸い団子のような形をしていたと言います。団子状の乾燥茶葉を粉にして、さらに煮出してから飲むため、非常に面倒でした。このわずらわしい工程をなくしたのが、茶葉を揉む工程。つまり「揉捻(じゅうねん)」です。

茶葉を揉むことで淹れやすくなり、より身近なものになった

茶葉を揉む理由は、しっかりと乾燥させるためです。茹でたり蒸したりした茶葉を揉むと、中に含まれる水分が押し出され、よりしっかりと乾燥できるようになります。この工程を加えることで団子にしなくても保存がしやすくなり、お湯に茶葉を入れるだけで手軽に飲めるようになったのです。このように製造手法の進化によって、お茶がより身近なもの、生活に欠かせない存在となり、さらに発展していきました。ちなみに、お茶を淹れるのに欠かせない急須も、新しい製造手法と共に生まれ、普及していったと言われています。

茶葉の揉み具合によってお茶の風味が長く楽しめる

「揉捻」によってお茶が淹れやすく身近な存在になったと同時に、お茶をおいしくする効果ももたらされました。茶葉は揉むことで細胞膜の一つひとつに傷がつき、より早く多く成分が抽出されます。そのためしっかりと揉んだ茶葉は味が濃くなりますが、早々に成分を抽出しきってしまうため、何杯も淹れることができません。逆に軽めに揉んだ茶葉は、時間をかけてゆっくりと成分が抽出され、繰り返し淹れても味や香りが安定するという特徴があります。

お茶のおいしさを最大限に引き出す揉捻

茶葉をしっかりと揉むのか、それとも軽く揉むのかは、さまざまな条件によって決まります。「蒸し方」「乾燥方法」によっても違う他、茶葉の「摘み方」「産地」などによっても変わります。茶葉に含まれる水分量や手で触った感覚などを頼りに揉む加減が決められ、お茶が持つ本来のおいしさが最大限にまで引き出されているのです。従来は職人が手作業で行っていましたが、非常に重労働であるため、手もみの技術を取り入れた機械揉みによって、品質の安定したお茶が楽しめるようになっています。

製法手法の発展によって、おいしく手軽になったお茶

平安時代から続く日本茶の歴史。長い時間をかけてさまざまな工夫や改善が重ねられ、現在の形に発展してきました。同じ茶葉でも、揉み方を変えるだけで味わいや香りに変化が生まれるのがおもしろいところです。お茶の歴史や作り手のこだわりを思い浮かべながら、ぜひいろんなお茶を楽しんでみてください。今まで以上にお茶がおいしく感じられるかもしれませんよ。