お茶は摘む時期と摘み方で味が変わる?知っているとちょっとうれしい日本茶よもやま話


日本茶には、手摘みと機械摘みの2つの摘み方があり、お茶の品質に影響すると言われています。さらに、摘み方以外にも、摘む時期によっても味わいが大きく変わるのが、茶のおもしろいところ。たとえ同じ畑で栽培した、同じ種類のお茶の木であっても、摘採(てきさい)するタイミングが出来栄えを左右します。今回は、知っているとちょっと自慢したくなる「お茶の摘採時期」について解説していきます。

春の終わりから初夏に最盛期を迎える新茶

その年の最初に摘み取られるお茶のことを「新茶」と一般的に言います。場合によっては、「二番茶」や「三番茶」と差別化するため「一番茶」とも呼ばれます。新茶を摘む時期は、南の地域から始まって、桜前線と同じように、徐々に北上していきます。

<日本茶の主要生産地の収穫時期>

鹿児島県/3月末~4月中頃

三重県/4月中頃~5月初め

静岡県/4月中頃~5月中頃

京都府/4月後半

岐阜県/5月初め

新茶の収穫が終わると、1ヶ月半程度の間隔を空けて、順に二番茶、三番茶、四番茶が摘採されていきます。

縁起物でもある新茶

さて、この新茶は古くから縁起物として重宝されてきました。初物が喜ばれるのはお茶に限りません。江戸時代には初ガツオを食べると寿命が75日も伸びると言われ、初ガツオは高値で取引されたほどです。同じように新茶も人気ですが、単に珍しいという理由だけでなく、風味や香りの点でも優れているとされています。新茶にはふくよかなうま味と甘みが多く、一方で苦みは抑えられているのが大きな特徴。中でも、うま味成分であるアミノ酸の一種「テアニン」が豊富に含まれています。これは、寒い冬の時期に茶葉に蓄えられたもので、暖かい季節になってから育つ二番茶や三番茶にはないものです。

収穫時期を判断する出開き度

茶の収穫は産地や品種、その年の天候などによっても違いますが、一つの目安となるのが「出開き度」という指標。茶の新芽は、芽の元となる5~6枚の葉が巻き込むような形になっていて、成長に従って徐々に1枚1枚が開いていきます。開ききっていく中で、最も最後に開くのが「止め葉」。止め葉が開いた瞬間を出開きと言い、この割り合いが「出開き度」です。茶畑全体でどれぐらいのパーセンテージで止め葉が出開きしたかどうかで、収穫の可否を判断するとされています。

摘採に最もいい出開き度とは

茶葉を収穫する摘採のタイミングは、品質を左右すると同時に、収穫量にも影響します。いわばこの2つの関係は、反比例するものであり、品質を重視すれば収穫量は減り、収穫量を優先すると品質が下がることになります。一般的には、出開き度50~80%で摘採することが多く、最も質と量のバランスに優れていると言えるでしょう。早摘みと呼ばれる場合は、30~50%の出開き度で摘採することが多いようです。早摘みの場合、柔らかく新鮮な茶葉が手に入りますが、おのずと収穫量は限られるため、高級なお茶として扱われます。

摘採が早い・遅いとどうなる?

新芽に含まれるアミノ酸などのうま味成分がピークを迎えるまでに早摘みしてしまうと、風味の点で見劣りします。一方、最適なタイミングを逃した場合は葉が固くなり、日光を受ける時間も増えて苦みの成分であるカテキン量が増します。カテキンそのものは体に良い成分ですが、苦く渋い茶葉に仕上がる傾向にあります。どのタイミングで収穫するのかは、茶畑を仕立てる栽培者の好みやイメージで決まります。

希少となった「一芯二葉」の手摘み

新芽の最も柔らかくうま味成分が多い部位は「一芯二葉」と呼ばれています。この希少性の高い部分だけを丁寧に手摘みしていくことで、品評会に出品するような極めて質の高い茶葉が手に入ります。ただし、この手法はコストも手間もかかることから、今ではあまり実施されていません。品質と生産性が最もバランスよく成立するタイミングで、専用の機械を使って摘採された茶葉が、みなさんの食卓に届くようになっています。

お茶の話題でほっと一息を

いかがでしたでしょうか。今回はお茶に関するちょっとした話題に触れてみました。お茶づくりは、品質と収量が最適化されるタイミングで摘採することがとても重要です。普段飲んでいるお茶にも、作り手の想いが込められていることを感じていただけたのではないでしょうか。ぜひお茶選びの参考にしてみてください。