いつものお茶がまろやかな味わいに?ケトルとは違う鉄瓶の魅力
鉄瓶とは、鋳鉄製のお湯を沸かすための道具。普段はなかなか目にする機会も少ない道具の一つですが、お茶のおいしさを引き出してくれる不思議な魅力があります。南部鉄器に代表されるように、日本各地には鉄瓶の産地があり、形もさまざま。さらに従来とは違って、IHにも対応した鉄瓶が作られるなど、鉄瓶にはたくさんの工夫と技術が込められています。今回は、鉄瓶で沸かしたお湯で淹れるお茶には、どんな特徴やメリットがあるのか、詳しく解説します。
そもそも鉄瓶って何?
鉄瓶とは、鉄を熱して溶かし、型に流し込んで成型する「鋳物(いもの)」で出来たやかんです。鉄は非常に錆びやすいため、「金気止め(かなけどめ)」という特別な処理がされています。1000℃以上もの高温に熱することで鉄瓶の内部に酸化被膜を形成して、錆止め効果を発生させる技術。一方、外側には天然の漆による焼き付け塗装を施し、非常に高い耐久性を持たせています。「鉄瓶は100年使える」と言われるゆえんには、こうした伝統的な技術による品質の高さがあるのです。
鉄瓶の代表格と言えば「南部鉄器」
日本全国に鉄瓶の産地がありますが、中でも有名なのが「南部鉄器」。その名前を耳にした方は多いのではないでしょうか。南部鉄器の産地は、岩手県盛岡市や奥州市の周辺。南部鉄瓶の外観上の特徴は、「あられ文様」です。大仏の頭髪である螺髪(らほつ)が起源と言われるように(起源に関しては諸説あります)、ぼつぼつとした小さな突起があしらわれています。この「あられ文様」には、鉄瓶の厚みを増して蓄熱性を高めて保温効果を最大化するという機能的な役割もあり、とてもよく考え抜かれています。ちなみに「南部鉄器」は鉄瓶だけでなく、急須や湯呑などさまざまな種類もあり、伝統工芸品として高い評価を得ています。
鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかな味わいになる
鉄瓶はお湯を沸かすための道具で、角が取れたまろやかな味になると言われます。その根拠は、水道水中のカルキ(塩素成分)が鉄瓶の内部に吸着されると同時に、体に吸収されやすい「二価鉄」が溶け出すからです。そのため、鉄分が不足しがちな方には、特におすすめで、鉄瓶で沸かした白湯を日課として飲む人も少なくありません。
鉄瓶選びの注意ポイント
口当たりがまろやかなお湯が沸かせる鉄瓶ですが、中にはその効果が期待できない製品もあるので注意が必要です。
内部コーティングをチェック
鉄瓶の内側にコーティングが施工されているものは、注意が必要です。コーティングは錆を防ぎ、手入れも簡単にできるメリットがありますが、カルキを除去したり鉄分が溶け出したりする効果はありません。購入の際には、ぜひ内部コーティングの有無を確認してください。
IHには底面直径13cm以上が必要
鉄瓶はご家庭のIHコンロにも対応していますが、底面の直径が小さすぎるとセンサーが反応しないケースがあります。大きめサイズの鉄瓶でも、丸みを帯びたデザインや底面の形状によっては、IHコンロで使用できないことがあるので注意しましょう。心配な方は、IH対応を謳っている製品を選ぶとよいでしょう。
錆びてもお手入れすれば大丈夫
「鉄瓶は錆が心配」という方もいると思いますが、鉄瓶の手入れはとても簡単です。普段はお湯を沸かした後、できるだけ早くお湯を使い切るようにすれば大丈夫。残ったお湯は別の容器などに入れておけば、空になった鉄瓶は余熱で水分が蒸発するので、乾燥した状態を保てます。もし錆びさせてしまっても、錆は簡単に取り除けます。鉄瓶に水を注いで市販のお茶を入れて、20分ほど煮出せばお茶に含まれるタンニンが錆びと反応することで除去されます。こすり洗いは避けて、普段はすすぐ程度にしておくのがベストです。
お茶はもちろん、コーヒー・紅茶、料理にもおすすめ
鉄瓶で沸かした口当たりの柔らかいお湯は、お茶はもちろんコーヒー・紅茶など他の飲み物にも最適です。普段とは違う味わいをぜひ楽しんでみてください。もちろん料理に使っても大丈夫。お気に入りの鉄瓶を見つけて、普段使いでも大いに役立てていただければと思います。