お茶の始まりは「薬」だった?!薬としてのお茶の起源ついて



「お茶を一服」という言葉があります。お茶を飲むという意味で日常的に使われていますが、薬を飲むときにも「薬を服す」「薬を服用する」などといいますね。同じ「服」という言葉が使われていますが、それもそのはず、お茶はその昔、薬として用いられていたのだそうです。今回はお茶の始まりに関する伝説やエピソードをご紹介します。

お茶が解毒剤として使われたという中国の伝説

お茶の発祥の地は諸説ありますが、中国南部の雲南省からインドのアッサム地方にかかる山地だといわれています。その中国で、今日の漢方薬の基礎を築いたといわれている神農という人物は古代中国の神とされていました。神農は多くの人々が病気で苦しんでいるのを見てどうにかしなければと考え、山野にある様々な植物がどのように効くのか自らの体をもって試したのだそうです。

1日に72もの毒に当たり、その都度茶で解毒!?

神農は草木の薬効を調べるために野山を駆け巡り、1日に72もの毒に当たることになりました。その都度解毒するために使ったのが茶の葉。この逸話こそ、歴史上お茶が出てくる最初のエピソードだといわれています。
あくまで神話としてのお話ですが、人とお茶の出会いは飲み物としてではなく解毒剤として始まったと考えてよいのかもしれません。お茶を飲むときの「一服」という言葉は、このことに由来するといわれています。

日本でも最初は薬として飲まれていた

日本でもお茶は最初は薬として用いられたという話があります。日本へのお茶の伝来は平安時代。最澄や空海など中国に留学した僧侶から伝えられました。中国で茶が薬として服用されていたように、当時の日本でも滋養強壮や健康のための飲料として飲まれていたようです。
当時、茶はとても貴重で一般の人は飲むことができませんでした。一部の上流階級が健康のために飲む飲料だったためその文化は広まらず、日本での茶文化は廃れていったといいます。

「養生の仙薬」であるお茶

その後鎌倉時代になると禅僧の栄西が茶種や抹茶の作法を宋から持ち帰り、新しいお茶の時代が日本で始まりました。その栄西が書いた本で有名なのが「喫茶養生記」です。栄西が学んだ茶の知識や効能を集約した茶の専門書で、「茶は養生の仙薬なり」という一文で始まっています。二日酔いになった将軍に栄西が良薬として茶を勧めたところたちまち将軍は回復し、これをきっかけに茶の効能が注目されるようになったというエピソードもあるようです。

<参考>
「静岡市 お茶を学ぶ」

「キリン食生活文化研究所 第17回 栄西と茶」

まとめ

お茶の始まりは「薬」だったとあって、お茶の発見と普及には先人の労苦と努力が多くあったことを垣間見ることができます。薬として扱われ、なおかつ高級品だったお茶を私たちが簡単に美味しく楽しめるのは本当にありがたいことですね。現代ではお茶はあくまで嗜好品ですが、健康に過ごすためのひとつのツールとして改めて見直してみたくなります。これから寒い季節を迎えるにあたり、風邪やインフルエンザの流行も気になります。ぜひ毎日の生活に美味しくて健康にもよいお茶を取り入れてみてくださいね。